『ラ・フォル・ジュルネ』コンサート二日目の感想/アンヌ・ケフェレック/イーヴォ・ポゴレリッチ

楽しいぃ〜〜♪ あぁ〜〜ホントに楽しい〜〜♪


すっかりお祭り気分になっております^^


今日も行ってきました、有楽町&丸の内。
連休中で、しかもいまや世界最大の音楽祭を開催中とあって、それは凄い人出でした。
丸の内では、オアゾの1階でも、丸ビルの1階でも、無料のコンサートが開かれ、馴染みのあるポピュラーなクラシック音楽が奏でられており、多くの人が立ち止まって耳を傾け、拍手を送っていました。
有料コンサートの会場である東京国際フォーラムも、真ん中の広場には多くの屋台が出て、人々は楽しそうに飲んだり食べたり喋ったり・・・
ガラス張りのビルの階下では、有料コンサートの半券を持っていれば入場できる「無料コンサート」が催されたり、アーティストのサイン会あり、子供のためのイベントあり♪
グッズ販売のコーナーには、作曲家のイラストをあしらったエコバッグやTシャツ、文具類やお土産用のお菓子が所狭しと置かれていて、それを品定めする人で大賑わい。
今回出演されているアーティストの方々のCDも販売されており、今日私は、昨夜の演奏で感銘を受けたボリス・ベレゾフスキーさんの「ショパン:ピアノ協奏曲第1・2番」を購入しました。今聴いてますが、やっぱり思った通りに素晴らしくて、明日は一緒に売られていた「リスト:ピアノソナタロ短調」も買ってこようと思います!
私、すっかり彼のファンになってます〜〜 次回また来日されることがあれば、絶対に聴きに行きます!




・・・では、本日の“目玉”コンサートの感想を




まず、なんといっても感動したのは、アンヌ・ケフェレックのピアノ独奏でした。
ショパンラヴェルドビュッシーの曲、それもある共通した「空気感」をもった曲で構成されたプログラムでした。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン熱狂の日」音楽祭2010 ショパンの宇宙】
  5月3日(月)11:45〜12:30 ホールD7(252)
  ピアノ演奏 : アンヌ・ケフェレック


  1.ラヴェル作曲  蛾(「鏡」より)
  2.ラヴェル作曲  悲しい鳥たち(「鏡」より)
  3.ショパン作曲  ノクターン 嬰ハ短調 KK IV a-16 [遺作]
  4.ショパン作曲  幻想即興曲 嬰ハ短調 op.66
  5.ドビュッシー作曲  水に映る影(「映像 第1集」より)
  6.ショパン作曲  子守歌 変ニ長調 op.57
  7.ショパン作曲  舟歌 嬰ヘ長調 op.60
  8.ラヴェル作曲  洋上の小舟(「鏡」より)


はじめに、アンヌさんの「お話」があり、「今回のプログラムは、大気と水を感じながら、寄港地のない航海に出るような気持ちで演奏するので、曲間の拍手はしないでください」・・と。
なるほど!・・と大いに納得し、ますます期待は高まってきて、いざラヴェルの『蛾』からスタートです。


いや・・もう・・・最初の数小節を聴いたところで、この“航海”は、相当に素敵なものになるぞ!!と思いました。
素晴らしいテクニックをお持ちの上に、その音楽を紡ぎ出す感性が、これ以上は考えられないくらいに洗練されていて、美しくて、ユニークで、思わず顔がほころびました。
アンヌ・ケフェレックさんは、主催者ルネ・マルタン氏の信頼が最も厚いアーティストだそうですが、そうでしょう、わかります!
これまでの「ラ・フォル・ジュルネ」でも、ずっと来日されていたのに、一度も聴かずにいたことを、今日ほど後悔したことはありません。
彼女が演奏するJ.S.バッハシューベルト、他にもいろいろ聴いてみたいです。絶対に素晴らしいはずです。確信を持って言えます。
『蛾』の次の、『悲しい鳥たち』がまた、冒頭の音色のなんと美しくて切なかったことか!
さらに『ノクターン嬰ハ短調』は、先日「前夜祭」の追悼セレモニーで小山実稚恵さんが弾くのも聴き、その前には知人ピアニストのリサイタルでも聴き、このところよく耳にする曲ですが、それぞれのピアニストの音楽があり、その場の求める気分もあって違うのは当然ですが、今日のアンヌさんの演奏は、出色でした。 かつて同じ曲を、ダン・タイ・ソンの演奏で聴いた時の衝撃に近いものがありました。 とても深くて、優しくて、悲しくて、美しくて・・・という。
続けて演奏された『幻想即興曲』にも驚きました。
この曲を、こんなに「いい曲」と感じたのは、もしかしたら初めてかもしれません。
このところそんな演奏しか聴いてこなかったからかもしれませんが、どうも通俗的で安っぽい曲だと思い込んでいたのですが、いやいや、そんな先入観はショパンにとても失礼だったと、今日思い知りました!
次のドビュッシーは、期待した通りの世界観でしたし、いよいよ私の最高に愛するショパンの名曲『舟歌』にいたっては、「こうしてほしい」と望む演奏に限りなく近く、嬉しくてじんわり涙が滲みました。
最後の『洋上の小舟』には、目の前にモネの絵が広がっていくような光と色彩があふれていて、自分が今、ここで彼女のピアノと同じ時間を共有してきたことを、深く感謝しました。


アンヌ・ケフェレックさん、最高です!
次回も来日されたら、絶対にチケットをゲットしますよ〜〜〜〜


・・・・昼食を取り・・・・


今回の「熱狂の日」音楽祭の最大の呼び物である、イーヴォ・ポゴレリッチの『ピアノ協奏曲』です!

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン熱狂の日」音楽祭2010 ショパンの宇宙】
  5月3日(月)14:30〜15:30 ホールA(213)
  指揮 : ゲオルク・チチナゼ
  オーケストラ : シンフォニア・ヴァルソヴィア
  ピアノ : イーヴォ・ポゴレリッチ


  1.エルスネル作曲  交響曲ハ長調Op.11
  2.ショパン作曲  ピアノ協奏曲第2番短調Op.21


まず、ショパンの師匠であったエルスネルが作曲した『交響曲第1番ハ長調』という曲を聴きました。
エルスネルという作曲家の名前を聞くのも初めてでしたし、勿論この曲を聴くのはお初の出来事・・・・
演奏は、「前夜祭」でも活躍していたシンフォニア・ヴァルソヴィアと、若い指揮者のゲオルク・チチナゼくん(かわゆい^^)です。
なにしろ初めて聴く上に、プログラムにも『交響曲第1番ハ長調』としかなく、真っ白な状態で、オケの音が出るのを待ちました。
始まると、これがとっても「古典」な音楽で、ハイドン交響曲を聴いているような錯覚が・・・
私のいい加減な“聞き耳”では、普通にセオリー通りに調性が移行するソナタ形式でしたが、終結部はちょっと工夫がありました。
第二楽章は、これはメヌエット? ただ、やっぱりポーランドの作曲家らしい拍のストレスがあって、「やっぱりウィーンあたりの古典派とは違うな〜」という印象に。
第三楽章は、こっちはスケルツォ? うぅ〜〜ん、なんだか今は記憶も遠くなって、第二楽章と混合してきました・・・ とりあえず中間楽章はどちらも三拍子で、わざわざ楽章を分ける必要があったのかと思うほど似ていて(失礼^^;)、どちらも複合三部のつくりだったような。
第四楽章は、また素直にソナタ形式で、なかなか軽快な曲でした。
・・・なぁ〜〜んて、全然違ってるかもしれません(笑) できることなら、こんな推理をしなくてもいいように、せめてプログラムに各楽章の調性、形式、テンポ表示くらい載せてくれてもいいのにな・・・とは思います!


そして、いよいよ御大、ポゴレリッチの登場です!




実は今日、ホールの開場が大幅に遅れまして、広いホールAのロビーが観客でぎゅうぎゅうになるまで待たされました。
かなりの時間を待たされて、やっと客席に入場したと思ったら、なんとステージ上では、まだポゴレリッチが若い指揮者を相手に、あーだこーだを注文をつけならが、ガンガン鍵盤を叩いてました^^;
「うわぁ〜〜」と驚くやら、いや、これこそポゴレリッチだね・・と、“御馴染みのもの”を観た嬉しさ半分("▽"*)
ポゴレリッチは、まだラフな私服姿で、赤いジャケットに、白いニット帽・・・という、暑かった今日の東京では、そうとうに浮き上がる格好。
久々に拝見しましたが、身体がますます大きくなられて、大昔ショパン国際コンクールに出場されていた頃の、あの細くて、目ばかりギラギラして、貧相なシャツを着て演奏していた姿からは、完全に別人です。
彼は、指揮者へのダメ出し(?)が終ってからも、しばらくステージ上で、スタッフに向かって、あーだこーだを続けてました。(何を言っているのかは遠くて聞き取れませんでしたが、かなりクセのある英語でワーワー言ってました) 何があったのでしょうかね?(笑)


そして、話は戻って、本番のステージに。


ショパンの『ピアノ協奏曲第2番』が、オーケストラの序奏で始まります。
ポゴレリッチは、実に泰然として広い客席を見回し、ちょっと微笑んだりして(なんだかそんな風に見えました^^)、演奏しているオーケストラにも会釈をしたり、椅子の具合を調整したり、・・とにかく、凄い余裕でしたね〜
そして、はじめの音がホールに鳴り響くと、おぉ〜〜〜やっぱり凄い。
そして更にビックリさせられるのは、その奏でる音楽、フレーズの作り方といい、テンポの取り方といい、いわゆる「期待しているもの」とは全然違うのです。(ポゴレリッチ的には“期待通り”というか“予想通り”の演奏でしたけども・・・)
彼独自の世界が構築されており、他のどんなピアニストとも違う、ユニークとしか言えない、ポゴレリッチのショパンなのです。


これは、やはり「好き嫌い」が別れるでしょうねー


私の率直な感想を言えば、彼の音楽って「大嫌いなのに、なぜか惹かれる男」・・みたいな感じです。
基本的に、今の私は、ポゴレリッチの演奏、音の出し方(うるさく叩き過ぎ!)、フレーズの作り方(バラバラ)、テンポ(遅い!!)など、まったく好きになれませんでした。
しかし、ところどころに、まるでそこに音楽の神が舞い降りてきたかと思えるような、息をのむようなキラメキがあって、それには心を鷲掴みにされます。
そういう瞬間が、時々やってきて、何度か不覚にも目頭が熱くなりました。
もうわけがわかりません・・・ 「いけすかない演奏だなぁー」とすら思う場面もあったのに、その数秒後に感動させられるって、どういうことでしょうか?
やはりポゴレリッチは、かつてアルゲリッチが言ったように「天才」なのでしょうか?


異様に長い(遅い)演奏が終わり、なんとアンコールで、もう一度「第二楽章」をまるっと弾いて下さいました。
気のせいでしょうか? 私には、このアンコールでの演奏の方が、ずっと受け入れられるものでした。何が違ったのでしょうか?


ステージでの立ち居振る舞いは、まさに「スター」そのものでした。
これに関しては、文句なしにカッコよかったです。 そして、チャーミングでした。
椅子もピアノの下に蹴り入れてましたし・・・・^^;


ホールを出ると、彼の演奏する『ピアノ協奏曲第2番』のCDを販売していましたが、さすがにCDでまで聴きたいとは思いませんでした^^;
あの演奏は、やっぱり気に障るというか、今の私の好みからすれば「不快」の一歩手前って感じです。
いや・・・・ほとんど「不快」かなー
あんなのショパンじゃないもん・・・(音楽ですらないと思った数分間もあったし・・)
ショパンは利用されてるだけ・・・
そう感じ始めると、もう本当に不快も不快、むかついてきます。
椅子を蹴りたいのはこっちだよっ!




ただ、その「不快」さをぬって立ち顕れる、一瞬の閃きに、突如、何度か感動させられてしまったことも事実でした。


うぅーーーん、やっぱり彼は、天才なのでしょうか・・・
それとも、天才だった「過去」が、時折ちらりと姿を見せるだけになっただけの過去の人・・・なのでしょうか?



どちらにしても、ずっと記憶に残る演奏会であったことは、間違いありません。



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