アール・デコの館

本日3月25日(木)から4月11日(日)まで、東京都庭園美術館にて、 『アール・デコの館』と題して建物公開展が催されます。

1933(昭和8)年に、アール・デコ様式の粋を尽くして建築されたこの建物は、もとは朝香宮の邸宅でした。
朝香宮家は1906(明治39)年に創設され、当主の朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)は、久邇宮朝彦親王の第八王子です。 昭和天皇の后、香淳皇后の父である久邇宮邦彦王の弟ですので、香淳皇后からみると叔父になります。
19歳で新しい朝香宮家の当主となった鳩彦王は、22歳で明治天皇の皇女である富美宮允子内親王と結婚。
35歳のときに単身フランスに留学しますが、翌年、妻の姉(明治天皇の皇女で母親も同じ)の夫(つまり義理の兄…ってことになりますネ)が運転する自動車で事故に遭い、重傷を負います。この事故で義兄は即死。同乗していた義姉は重傷。この知らせを受けて、夫の朝香宮と姉を心配した允子内親王はパリに駆けつけ、数年そこに滞在することになりました。結果、夫妻共に当時フランスで大流行中だったアール・デコに強く魅せられ、帰国後、現在の東京都庭園美術館である邸宅を建設・・・というわけです。
ただとても残念でお気の毒なことに、最もこの邸宅のデザインに心を込めていらした允子内親王は、完成後すぐ病気で亡くなられました。さぞかし心残りでいらしたことでしょう。
日本が戦争に負け、多くの宮家が皇籍離脱し“一般人”となりましたが、朝香宮家も同様で、1947年以降、朝香宮鳩彦王は朝香鳩彦となられ、住居も熱海に移されました。ゴルフ三昧でお暮らしだったようです^^
アール・デコの館は、その後しばらく総理大臣(吉田茂)の仮の公邸として使われ、迎賓館として使用された時期もありましたが、1981年に東京都が買い取り、現在のような美術館として生まれ変わりました。


フランスの装飾美術家アンリ・ラパンや、ガラス工芸家ルネ・ラリック金属工芸家のレイモン・シューブらが制作した工芸品が、今も往時のままに館を飾りますが、通常美術館として使われているときは、壁がパネルで覆われていたり、非公開の部屋もありますので、今日からの特別公開は、この邸宅そのものをじっくりと鑑賞する絶好の機会です。
二階の窓辺からは、正門から玄関にかけての桜も眺めることができます♪



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