フランコ・ゼッフィレッリ

今日2月12日は、イタリアの偉大な演出家フランコ・ゼッフィレッリのお誕生日だそうです。
彼のことは数日前のプラシド・ドミンゴの記事でも書きましたが、87歳というご高齢で、今尚精力的にご活躍です。


私が最初にゼッフィレッリの名前を意識したのは、テレビ放送された映画『ロミオとジュリエット』を観てからでした。
中学生だった私は、自分と同年代の若い俳優が、シェイクスピアの名作を演じていることに、大変な興味を持ちました。
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ジュリエット役のオリビア・ハッセーが、それはもう美しくて、(ロミオ役に関しては「これは好みではない!」と思ってましたが^^;)、こんな熱い恋をいつか自分もしたいものだと夢見たものです〜
そして何よりも感動したことは、映像のリアリティーでした。
中世のイタリアとは、こういう街で、人々はこういう生活をしていて、こういう格好で生きていたんだな・・・ということが、とても丁寧に描き出されていて、そこにも夢中になりました。
そして、この映画を監督した人がフランコ・ゼッフィレッリという名であることを覚えました。


ロミオとジュリエット』1968年作


この映画を見た後、わりに間を置かずに、今度は学校の映画上映会で『ブラザー・サン シスター・ムーン』を観ました。
これがまた魅力的な映画で、ここにきて完全に私はゼッフィレッリ監督の大ファンとなったのでした。



大学生になり、日本はバブルの好景気で、ミラノのスカラ座が初の引越し公演で東京にやって来ることになりました。
当時我が家は、父の投資が大当たりして大変裕福だったこともありますし、そもそも父が根っからのクラシック音楽好き、中でもオペラ好きですので、ほぼ全ての公演初日に、家族揃って出かけました。
プラシド・ドミンゴの『オテッロ』も素晴らしかったのですが、舞台として度肝を抜かれたのは、ゼッフィレッリが演出した『ラ・ボエーム』でした。
これには本当に驚きました。
舞台の奥行きが、よく観る日本のオペラとは格段に違っていたからです。


ゼッフィレッリ演出の『ラ・ボエーム』第二幕 スカラ座


特に第二幕のパリの街の再現と、そこを歩いている人の多さに目を奪われ、心をぐいっと物語の中へと持っていかれました。
後で聞いたところでは、この第二幕の舞台後方を歩いているのは、大人の格好をさせた子供だそうで、背景装置もそれに合わせて小さく作り、それによってより奥行きが出されているとのことでした。
こうした徹底したリアリティーの追及がなされているので、物語としてはただ「根無し草のような若い芸術家の恋愛話」だというのに、まるでそこに生きている身近な人々のように感じられ、最終幕でヒロインが亡くなってしまう場面では、止め処なく涙があふれて困りました。


その後、今度は『椿姫』の映画を撮ったということで、封切すぐに観に行きました。
これがまた素晴らしく豪華なオペラ映画で、私の中の「ゼッフィレッリ信仰」は、完全に固まったのです^^


『La Traviata 椿姫』夜会のシーン 1982年作


ヴィオレッタを歌ったテレサ・ストラータスが美人で、アルフレードドミンゴも「ややオジサン」ではあるもののオペラ界としては最高ランクの美男子で、そして何よりも舞台装置が想像を超えて豪奢でした。
これぞゼッフィレッリという、観客を別世界へと誘う、夢のような映像美!



・・・・というわけですので、昨年末のローマ歌劇場での『椿姫』のキャスティングから、ダニエラ・デッシーがゼッフィレッリによって外された・・というニュースを聞いたときは、「それは酷な・・」と思うと同時に、ちょっと納得できる部分もありました。
ゼッフィレッリという人は、とにかく美意識の塊のような人なんですよね。
オペラは、確かに歌の芸術かもしれませんが、同時に演劇であるわけで、それを演じる人にリアリティーや総合的な美しさを求めるのは、当然のことかもしれません。
それにフランコは元来ゲイで、女性に興味がない御方なので、ダニエラ・デッシーのような「女のお色気全開フェロモン系」みたいなタイプは、そもそも好みではないのかも・・・です("▽"*)  よく分かりませんけど・・




いろいろ書きましたが、なにはともあれ、今日は彼の誕生日ということで、おめでとうございます
これからもますますのご活躍を!





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《ラ・トラヴィアータ》-椿姫- [DVD]←ストラータスは2幕以降は素晴らしいですが、1幕のアリアはいまいちかなぁ


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