ロレンツォ・ダ・ポンテ『われは、ドン・ジョヴァンニ』

先日観た、映画『Io, Don Giovanni』(われは、ドン・ジョヴァンニ)の感想を、簡単に書いておきます。


4月10日に封切られ、現在東京の渋谷「Bunkamuraル・シネマ」と銀座の「銀座テアトルシネマ」、そして先週末からは大阪の「テアトル梅田」でも上映中です。
今後、限られた劇場ではありますが、全国で順次公開される予定です。


監督は、スペイン映画界の巨匠カルロス・サウラ
モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コシ・ファン・トゥッテ』の台本を書いた、劇作家で詩人のロレンツォ・ダ・ポンテを主役に、彼の人生を追いながら、同時に『ドン・ジョヴァンニ』というオペラが、いかにして創られていったかを描いています。
これまで、あくまでも「モーツァルトの脇」で語られてきたロレンツォ・ダ・ポンテでしたが、今回は彼が中心の物語ですので、そこがまず新鮮です。
そして、『ドン・ジョヴァンニ』というオペラのファンにとっては、この映画は、そのオペラ誕生の瞬間からをずっと、臨場感あふれる手法で丹念に見せてくれる、非常に興奮する内容です。


役者も魅力的です。


ロレンツォ・ダ・ポンテを演じた、ロレンツォ・バルドゥッチは、ちょっと日本の水島ヒロ似。
いや、実際かなり似てます(笑)
モーツァルトを演じる、リノ・グワンチャーレも、とても可愛らしい!
二人の若手俳優が、とにかくチャーミングです。


女優陣は、まずプリマドンナ歌手を演じるケテワン・ケモクリーゼの存在感が、抜群です。
彼女は、自身も現在最も注目される若手歌手であり、映画の中での歌唱も実際に彼女が歌っています。
歌の実力も相当なものですが、演技力もあり、怪しいまでの美貌で、凄まじいオーラを感じます。
ロレンツォが恋するアンネッタを演じる、エミリア・ヴェルジネッリも、可憐な美貌の持ち主で、当時の衣装がよく似合います。


サリエリやカサノヴァといった人々も、重要なシーンで登場し、主役たちとの関わりが面白いです。


今回、この映画を見て、二人の天才芸術家が、当時使い古されていた「ドン・ジョヴァンニ」という通俗的なキャラクターを、見事に一人の「自己を貫く男」としてつくりかえたことに、あらためて感嘆しました。
この世のあらゆる常識、道徳観念、価値観に対して、たとえ地獄の底に落とされようとも、「No!」と言い続けるドン・ジョヴァンニ
それはまるで、『カルメン』の最終幕で、たとえ殺されようとも自分の思うところを曲げることがなかったカルメンと同様、エゴイズムを貫き通した人間の「清々しさ」を感じさせ、そこまで持ってくるドラマと音楽の力に、ただ唸るしかありません。


映画を見終わり、今度はすぐにでもオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を観たくなりました!!


映画予告編


ケテワン・ケモクリーゼを取材した番組映像




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