狩野永徳と長谷川等伯

2年前、2008年の夏にも、やはり東京国立博物館にて、凄い特別展がありました。
『対決−巨匠たちの日本美術』と題され、その時代にライヴァルとして競い合った巨匠を一対にし、それは興味深く、興奮する展示がなされていました。
「運慶 vs 快慶」にはじまり、「永徳 vs 等伯」「宗達 vs 光琳」「若冲 vs 蕭白」「歌麿 vs 写楽」などなどと続き、最後が「鉄斎 vs 大観」でした。


あの当時、その数年前から私が夢中になっていたのは伊藤若冲で、この展覧会の時も、一番熱心に見続けた作品は、彼の『仙人掌群鶏図襖』であり、「対決」の相手とされた曽我蕭白の『群仙図屏風』でした。


(上)伊藤若冲の『仙人掌群鶏図襖』  (下)曽我蕭白の『群仙図屏風』


今思い出しても、「変人絵師」二人の対比は見事なもので、方々で「今回の特別展はこれだけでも満足したくらい」・・と、言って歩いたほどでした。




しかし、現在開催中の『長谷川等伯展』を観ていて、急に鮮やかに思い出されたのが、これにいくつか先立って展示されていた、「永徳 vs 等伯」の素晴らしさでした。


狩野永徳は、名門狩野派の御曹司にして天才絵師。
長谷川等伯は、田舎から京に上り、筆一本で成り上がった、やはり天才絵師。
この二人が仕事を奪い合い、互いに命を削りながら競い合っていたことは、大変有名ですが、一昨年の特別展でのように、あらためて両者の作品を並べ鑑賞すると、彼らの内にある「美」への献身と、表現方法の探究心に胸うたれ、圧倒されるばかりでした。
等伯の代表作としてメインで出品されていたのは『松林図屏風』で、狩野永徳は『檜図屏風』でしたが、共に発する空気が一歩も譲らないといいますか、正直、その場に居ると二つの磁場に引っ張られるような、日常ではなかなか味わえない気持ちを体験しました・・・
狩野永徳『檜図屏風』 
長谷川等伯『松林図屏風』
 




目下開催中の展覧会では、「主役」は等伯一人ですので、展示の説明文などを見ても、けっこう「等伯贔屓」に書かれてまして(笑)、「永徳=敵」という印象を受けなくもない感じ・・・でしょうか? 「狩野永徳妨害工作」なんて文句もあったような無かったような・・・ いやいやどうして、等伯だって相当な野心家ですから、狩野サイドからすれば、いろいろ言いたいこともあったことでございましょう〜〜


ただ鑑賞する側からすれば、一昨年のように、屹立する二人の間で右往左往するのも楽しいし興奮するものですが、今回のように、一方からの視点でじっくり叙情的に、一人の人生や作品を追う展覧会というのは、心置きなく浸れていいものですね^^




・・・と、そんなこんなを思いながら、一作毎に丁寧に見ていたら、予想以上に時間がかかりました("▽"*)




それにしても・・・
願わくば、東京国立博物館には、平日の閉館時間を、もう少し延ばしてもらいたいものです・・・
17時で閉館・・・って、ちょっと早すぎませんかね?
金曜日は18時まで・・とのことですが、普通の社会人なら18時に職場が出れるかどうかですから、まず訪れることは不可能でしょう。
それに、これは公立美術館はどこもそうですが、閉館の30分くらい前から、煩く「追い出しアナウンス」をしすぎです。
あれは非常に気持ちが追い立てられ、落ち着いて鑑賞してはいられなくなります。
通勤電車の駅ホームじゃあるまいし、もうちょっと静かに放っておいてもらえませんかね・・・ 
閉館時間近くに入った客は、皆誰だって、それなりに時計を気にはしてるんですから! わーわー煩く音楽を流したり、「あと15分」「あと10分」「お急ぎ下さい」と煽るのはやめてほしいです。その上に「閉館時間までごゆっくご鑑賞ください」と付け足すこともあり、本当に悪趣味だと思います。その放送のお蔭で、ぜんぜん「ごゆっくり」どころではないではないかぁーーーー! 美術館でまで電車の発車ベルみたいな「わーわー」したものを聞かせないでほしいです!!


・・・と、なんだか文句言い放題で締めてしまい、まことにスミマセン・・・(^-^;)


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