便器芸術展

今月、フィレンツェメディチ・リッカルディ宮殿で、ちょっと面白い展覧会が開かれています。

メディチ家宮殿で便器芸術展 イタリア・フィレンツェ
 ミケランジェロなどルネサンス期の巨匠を支援したことで有名なイタリアの名家メディチ家の宮殿「メディチ・リッカルディ宮」(中部フィレンツェ)でこのほど、トイレの便器を題材にした芸術作品の展覧会が始まり、市民らの人気を呼んでいる。
 フィレンツェのトイレ・浴室設備販売会社が企画、15世紀に建設された宮殿を管理するフィレンツェ県と交渉し許可を得た。イタリア、フランスなど計20人のデザイナーが出展、入場無料ということもあり、主催者側によると1日平均約千人が訪れている。
 環境保護を訴える緑色を使い公園のベンチの中央部分に便器を埋め込んだものや、女性の唇を模した便座、両端に便器を埋め込んだ遊具シーソーなど、ユニークな作品が観客らの目を引いていた。
 地元の女性エレナ・カラブスさん(40)は「実際に便器として使えそうな作品もあり面白かった。歴史的に有名な宮殿の空間を使った点も意外性がある」と話していた。展覧会は21日まで。(フィレンツェ共同)

メディチ・リッカルディ宮で展示された緑色の便器を使った作品

便器のアートといえば、真っ先に思い浮かぶのは、マルセル・デュシャンの『泉』ですが・・・

↑これのレプリカは、けっこうあちこちの美術館にありまして、どこでも恭しく陳列されているのですが、何度見ても心楽しくなります。


今回フィレンツェで開催されている「便器芸術展」も、きっと楽しいものなのではないでしょうか^^
そして、見た人誰もを、ちょっとした“哲学者”にしてくれるんですよね・・・
会場がメディチ・リッカルディ宮殿・・というのも素晴らしいです。




そういえば、竹橋にある国立近現代美術館が所有していた、『泉』のレプリカの一つが、数年前、パリの企画展に貸し出された際に、ワケのわからん自称アーティストの男にハンマーで叩き壊される事件がありましたが、あれは結局修復されたのでしょうか???
確かこの犯人は、これ以前にも同じ作品にお○っこをかける・・・という(-"-)・・“犯罪”を犯しているのですが・・・
裁判では数千万円の罰金刑が課されたようでしたが、はたしてこの気のオカシイ犯人に、そんな大金が払えるのでしょうか???



そうそう・・・話は強引に変わり・・
マルセル・デュシャンのお墓には、次の有名な言葉が刻まれています。


『死ぬのはいつも他人ばかり』


便器を「芸術」として提出したことと、「死ぬのはいつも他人ばかり」という言葉・・・
一凡人の私には、便器を芸術にする発想はないけれど、後者の感覚は、なんとなく分かります。


今少し考えてみると、生きることって、ある意味、排泄することなんですよね。
排泄できなくなったら、その時は「お墓」へ・・
そして、自分が生きてる間に起こる「死」は、全部「他人」のものばかりです。


ただ、その「他人」が限りなく「自分」に重なる身近な人だった場合、その人の死は、半分は自分自身の死でもあるわけで、そうなるともう本当に辛いです。
もはや半分死んでいる感覚だというのに、ふと気がつくと毎日元気に「排泄」してる自分がいて、そこでまた魂が引き裂かれるような、一人ぽつんとここに取り残されたという思いを、何度も繰り返し味わうことになります。


便器って、「生きていること」の確認の受け皿みたいなものなのかもしれませんね〜




デュシャンは語る (ちくま学芸文庫)

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