イタリア映画祭2010 『やがて来たる者』

このゴールデンウィークは、もう本当に忙しくて大変な数日間でした。
なにしろ、このブログでもずっと書いてきたように、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010」の「ショパンの宇宙」が開催されており、その演奏会にいくつも出かけたことに加えて、実は、同じ有楽町のすぐ近くでは、「イタリア映画祭2010」が催されていました。
幸いにして、どちらも有楽町の、移動時間にして徒歩5分♪の近さでやってくれますので、演奏会と映画を掛け持ちで見ることは容易いのですが、しかし・・・私もそう若くはないので、ハシゴ鑑賞はかなり疲れます(-"-)


以前から「これだけは絶対に」・・と思っていたので、『やがて来たる者 L'uomo che verrà』(ジョルジョ・ディリッティ監督)を観ました。
2009年のローマ国際映画祭で審査員賞と観客賞を受賞した作品です。


・・・いやはや、予想していたとはいえ、とても重く考えさせられる映画で、しばらくここから気持ちを切り替えることができませんでした。
切り替えられないまま、とにかく身体は東京フォーラムへと運び、ルネ・マルタン氏のトークを聞いたりしてはおりましたが、やっぱり胸のうちの半分以上は、さっき観た映画のことで占められ、自分がいま立っている場所は2010年なのに、心は1944年に置いてきたような、そんな感じでした。
その後夕食をとり、若手の素晴らしいピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリの演奏を聴くことで、やっと均衡を取り戻したわけですが、その後数日も、映画の感想を書く気持ちになかなかなれず、今日になってしまいました・・・


  



物語は、1944年9月末から10月にかけて、イタリアのボローニャ近郊マルザボット(Marzabotto)村で起きた、ナチスによる住民虐殺がもととなっています。
パルチザンに協力的である・・ということで、ナチスは報復の意味をこめて、この村の住民(主に女性、子供、年寄り)を無差別に殺戮しました。

この虐殺事件の関係者十数人が裁判にかけられた・・というニュースが、つい最近、2007年にもありましたから、けっして過去の風化した話ではありません。
そして、この映画は、まさに私を、1944年のこの村へと誘い、痛ましい出来事の一部始終を見せてくれました。


凄いのは、ナチスの親衛隊のことを、一方的に加害者として描いていないことでした。
彼らもまた、個々の苦悩を抱え、悩み迷う一人の人間として登場します。
それだけに、どうしてこのような普通の人々が、互いに殺しあったり、無抵抗の者を蹂躙することができるのか、そのことの恐怖に、鳥肌が立ちました。


映画祭だけでの上映ではなく、近く一般に公開されるそうなので、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいです。
主演の女の子に、観た人誰もが、胸うたれると思います。




イタリア・パルティザン群像―ナチスと戦った抵抗者たちボローニャ紀行