『細川家の至宝』特別展の感想

先週4月20日から、東京国立博物館の平成館で開催されている特別展『細川家の至宝』の感想を書いておきます。
(明日からは『ラ・フォル・ジュルネ』でしばらく頭がいっぱいになりそうなので・・^^;)


非常に渋みのある、味わい深い展覧会だと思います。
前半は、鎌倉時代に遡る名門の武家としての細川家の歴史が、貴重な品、文書と共に展示されています。
中でも私の興味を引いたのは、本能寺の変の後、明智光秀から細川藤孝に宛てられた手紙と、その明智光秀の娘で細川忠興の妻であった細川ガラシャの手紙でした。
「字」というものは、書いたその人を非常によく表すものなので、歴史上の有名人が書く「字」には、いつもとても関心があるのですが、その意味で今回の展覧会は、非常に興奮する内容です。


まず、明智光秀の字には、高潔そうな人柄が、はっきりと顕れていました。
更に、勢いのある筆使いや墨の濃淡、筆圧のかけ方から、当時の彼が、いかに時間的にも精神的にも追い詰められていたかが伝わってきます。
かなり急いで切羽詰って書かれたもののように感じますが、それでもきちんとした几帳面な字配り、構成で、明智光秀という人が、非常に明晰な秀才であったことが分かります。


その娘の細川ガラシャは・・・というと、彼女が侍女に宛てた手紙を見ると、これまた意外な印象を受けました。
あくまでも文字から受ける印象ですが、実は彼女は、かなり大胆な女性だったのではないでしょうか?
才気あふれる頭のよい人が書きそうな文字であり、もしかするとけっこう感情の起伏が激しい、あるいは、思ったことがすぐに顔や態度に出るタイプの人だったのではないか?・・・などと感じました。
手紙の文字は、メリハリの利いた、リズミカルで美しいもので、きっと基本的には、のびやかで明るい人だったのではないか?・・・などなど、あれこれ想像しました。


他にも、若き日の細川忠興に、織田信長が書き与えた手紙もあり、この字もまた、いかにも信長らしい字でした。


後半は、16代当主・細川護立の美術コレクションでしたが、流石に素晴らしく見ごたえがありました。
まさに「殿様」の審美眼で集められた傑作の数々です。
こんな言い方をすると怒られそうですが、集めっぷりにいやらしい、変な欲がないのです。


一口にコレクションと言いますが、物の集め方には、その人の品格が出ます。
その人が集めている物には、それを集めた人の人間性が浮かび上がってきます。
その点、この細川護立ほど、無心に、純粋に、朗らかに、美術品と向き合っている人も居ないような気がします。
「育ちが良い」とは、こういうことなのか・・・と、しみじみ実感させられる、そんな展示の数々でした。
つまり、コレクションそのもの・・というより、これを集めた細川護立という人に出会う展示で、見終わった時には、おそらく多くの人が、この面白い「お殿様」のことを好きになっているのでは?・・・と思いました^^




ところで今日は、授業が午前中で終わりだった・・という高校生の息子も「行ってきた」そうで、感想を聞いてみると、「甲冑の展示、刀剣類の展示が面白かった」・・・そうです。
売店で「鍔柄」の手ぬぐいを買ってきて、さっきからずっと満足そうに眺めてます^^
彼はずっと剣道をやっていることもあり、よく手ぬぐいを買うのですが、それを見ていたら、「なるほど! 庶民の息子には、庶民なりのコレクションの楽しみもあるわけですね〜」と、思いました(笑)


細川家の700年 永青文庫の至宝 (とんぼの本)細川家史料〈18〉 (大日本近世史料)